資本主義の仕組みがよくわかる! いまこそ知りたいマルクスの「資本論」。
金融危機と世界不況。
今日の世界経済は破綻の危機に瀕している。
資本主義経済のどこにその原因があるのか――。
マルクスの説く、商品・貨幣と資本の関係、労働力と賃金、
資本主義者社会の矛盾などを平易に解説。
経済の仕組みが手にとるようにわかるマルクス「資本論」入門書。
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※本文抜粋※
◆1章 商品・貨幣と資本 1 資本主義は商品社会
【資本主義的生産様式】
まず1章では、『資本論』で展開されるマルクスの分析の前提である商品・貨幣および資本について説明しよう。
『資本論』第一巻冒頭の文は、次のようなものである。
資本主義的生産様式の支配的である社会の富は、
巨大なる商品集積として現れ、個々の商品はこの富の成素形態として現れる。
したがって、われわれの研究は商品の分析をもってはじまる。
『資本論』を読もうと思ったがその1ページ目の最初の文でつまずいた、
というのは笑い話ではなく、実際によくある話である。
しかし、わかってみればまったく無駄のない、きわめて印象的な文でもある。
まず「資本主義的生産様式」について。
資本主義と訳すのが今では常識だが、かつては「資本制的」とか「資本家的」とする訳もあった。
直訳すると資本家的生産様式となる。現実として、資本家が世の中の生産を支配している。
すなわち、社会に必要ないろいろな富の生産を支配している。
『資本論』はそういう社会の分析をする書であった。
◆4章 大工業と労働者 2 機械と労働者
【労働力価値の低下】
価値分割が具体的にどのようにして起こるかというと、たとえば「今月から妻が働くことになりました」と言ったら、
「では今月から賃金を40万円から20万円に下げます」と個別的に決まるわけではない。
とはいえ、もし労働者の全所帯が共働きになれば、労働力の価値規定は社会的に20万円に下がる。
そうなったら働き損である。今まで1人で済んでいたものが、2人で働いて結局得る金額は同じになる。
一方資本家は、今までと同じ金額で2倍の労働力を使用できることになる。
現実的には、婦人労働者が増えていくと、
それにしたがって社会的平均として労働力価値が40万円から少しずつ低下していく。
男女同一賃金とすれば、たとえば1割の家庭が共働きになれば
おのずと労働力の再生産費が約36.3万円(40÷1110)に下がる。
したがって、共働きしてない家庭では、
今まで40万でいちおう再生産できた生活が、賃金が下がって生活が苦しくなるだろう。
苦しいから妻が働きだすと、共働きの家庭の合計賃金は、最大限では倍増する。
しかし、そのようにしてもう1割の婦人が働くようになると、
労働力価値はさらに下がって約33.3万円(40÷1210)になる。
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※本書は角川学芸出版・平成21年5月25日発行「知っておきたいマルクス「資本論」」のiPhone/iPadアプリ版です。